やりたいこと
ローレンツ変換を一般的な仮定の下で導出する.
状況と仮定
状況
- ある慣性系と,それに対して速度で動いている慣性系を考える.
- 後半ではさらにに対して速度で動くも考える.はと同じ方向を向いているとする.
- の時間座標を,速度の向きの空間座標をとする.
- も同様に座標をとする.
仮定
以下の仮定を上から順番に使っていって,変換則が満たすべき関係式を求めていく。
- からへの座標変換は1次式で表されるとし,その係数行列(速度の関数) を次式のようにする:*2*3
この変換行列は正則とする. - 空間の等方性:座標軸を反転させても同じ座標変換が成り立つとする(ただし速度はに変わる).
- 運動の相対性:慣性系から見ても同じ座標変換で表せる.ただし速度はとなる.*4
- 座標変換行列のうち, と が同時に恒等的に0,ということはないとする.分かりにくいが何が言いたいかと言うと, ,あるいは
- 変換の群構造:慣性系から見ても同じ座標変換で表せる.ただし速度は分からないのでとし,後で導出する.
- 光速不変原理を含む時空距離の不変性:
- は に対応する.*5
- が小さいとき, はガリレイ変換になる.
導出
今後引数としての速度は時々省略するので注意.
仮定1(変換の1次性)と仮定2(空間の等方性)から
式(1)のとにマイナスをつけてもよいから*6
これと式(1)を比較すると,は偶関数,は奇関数であると分かる.
仮定3(運動の相対性)と仮定4から
が成り立つ(さっきの偶関数・奇関数の話を考慮している).これを変形すると
これを式(1)と比較すると
ここで仮定4と3番目・4番目の式より .1番目と2番目より .さらに より .
ここまでの結果を整理するためにこれらを式(1)に代入すると
仮定5(群であること)から
群になることを言いたければ
なので,あとは積について閉じている: を示せばよい.ここから2つ目の慣性系 の出番.
について調べる前に,とにある制限がかかることを示し,式を見通しやすくする.
に式(2)による の具体形を入れると,*8
式(3)の左辺の対角項2つは同じだから,右辺の対角項は等置できる.
このはによらない定数であることに注意. の場合 になるが,その時は と考えるようにする.
もう一度ここまでをまとめておこう.を使って式(2)からを消し,は単にとだけ書き表すことにすると,
速度合成則
に式(4)を代入し,の関係を求めよう.
ここでルートの外にある を,新しい関数を使って
と書き変える.も同様に に置き換えると,
2本目の式/1本目の式をするとルートがきれいに消える.敢えて引数を復活させて書くと
となる.この式を使ってを求めれば, が成り立ちこの変換は群になるということだ.
この式は普段よく目にするローレンツ変換の速度合成則とよく似た形だ.仮定1~5だけで,言い換えれば光速不変原理を使わないでこれが出るというのはちょっと意外じゃないか?
仮定6(光速不変原理)より
ここで初めて光速度を登場させ,を決める.式(4)を使うと,
整理して
となる.これが任意のに対して成り立たないといけないから,となる.
これを式(4)に代入してまとめると
また速度合成則(式(5))は
となる.
仮定7(原点の運動)より
(敢えてここまで頑なにこの仮定を使わなかったけど,使ってればもっと簡単に議論できたのかな.)
のとき だというのだから,
というわけで,普段よく見るローレンツ変換が出てきた.
仮定8
あれ,使ってない!?
*1:レイはネ豊
*2:1次変換に限定していい理由については,http://bakamoto.sakura.ne.jp/buturi/senkei.pdf が納得感があった.
*3:でも非線形変換でもいい気がするなあ.その場合でも微小な を考えている限りは線形としていいのだろう.
*4:これはかなり強い要請らしい.が,これがないととでスケールを揃える基準がなくなってしまうので困る.
*5:これが先にあれば仮定4は冗長だけどね.
*6:もし が時間でなく空間座標だったら, と同時に に変える必要がある.が,この場合結果として何が出てくる?
*7: ならどうなるんだろう?
*8:一応言っておくと,速度のときの関数などはなどと略記している.