wetchのブログ

他人に見られることを想定していない書き散らかし独習ノート.物理学とかVBAとか.

電磁場のエネルギーからクーロン力を導出したい(できない)

通常の電磁気学の学習はクーロンの法則

\displaystyle F=\frac{1}{4\pi\epsilon}\frac{q_1 q_2}{d^2}

から始まるが,これは遠隔作用の考え方をしているので,近接作用から導出する形にしたい.
また,電荷よりも場の方が実体だという考え方をした変形をする.

思考順序としては,

  1. 2個の点電荷q_1, q_2が,ある距離だけ離れて存在している.
  2. 電荷からは面密度がそれぞれD_1, D_2の電束が放出されている.
  3. 空間の誘電率\epsilonより,電束密度は電場Eに変換される.
  4. 場のエネルギー密度を全体積で積分することで系のエネルギー
    \displaystyle \mathcal{E}=\int\frac{1}{2}D\cdot E\ \mathrm{d}V

    が求められる.
  5. エネルギー\mathcal{E}電荷間の距離の関数であろうから,それで微分することでクーロン力を得る.

で行けると思う.

単位系は2元系とする.

電荷q_1, q_2 \sim[\mathrm{N^\frac{1}{2}m}]から生じる場をそれぞれD_1, E_1, D_2, E_2 \sim[\mathrm{N^\frac{1}{2}/m}]とすれば,エネルギー密度は

\begin{align}\frac{1}{2}E\cdot D&=\frac{1}{2}(E_1+E_2)\cdot(D_1+D_2)\\&=\frac{1}{2}E_1\cdot D_1+\frac{1}{2}E_2\cdot D_2 +E_1\cdot D_2\\& \sim[\mathrm{J/m^3}]\end{align}

となる.右辺第1,2項は電荷間距離によらないため電荷間距離で微分すれば消えるから無視して,エネルギーは
\displaystyle\mathcal{E}=\int E_1\cdot D_2\ \mathrm{d}V = \int D_1\cdot D_2\ \mathrm{d}V  \sim[\mathrm{J}]

ということになる.

1次元

まずは最も簡単に考えて,1次元問題としよう.コンデンサのような状況を考える.
無限に広く無限に薄い板が2枚,x \sim[\mathrm{m}]軸に垂直に並んでいる.板Aは原点位置に固定されており電荷密度q_A \sim[\mathrm{N^\frac{1}{2}/m}],板Bはx=d>0の位置にあり電荷密度q_Bとする.
板その2にかかる力(つまりdが変化した時のエネルギー変化)を求めよう.
(適当なサイト*1によるとF=Q^2/(2ε_0 S)で,ここでは電荷の面密度q=Q/S,力も面積当たりの力f=F/S \sim[\mathrm{N/m^2}]で考えてる.また力の向きは明らかにマイナス方向なのでf=-q^2/2となるはず.)

板Aから生じる電束密度

D_A(x)=\begin{cases}-q_A/2&(x<0)\\+q_A/2&(x>0)\end{cases}

板Bからのは
D_B(x)=\begin{cases}-q_B/2&(x< d)\\+q_B/2&(x>d)\end{cases}

したがって
D_A(x)D_B(x)=\begin{cases}q_Aq_B/4&(x< 0)\\-q_Aq_B/4&(0< x< d)\\q_Aq_B/4&(x>d)\end{cases}

積分して
\begin{align}\mathcal{E}&=\frac{q_Aq_B}{4}\left(\int_{-\infty}^0\mathrm{d}x-\int_0^d\mathrm{d}x+\int_d^\infty\mathrm{d}x\right)\\
&=\frac{q_Aq_B}{4}\left(\infty-d+(\infty-d)\right)\end{align}

\inftyの項はdによらないのでd微分すれば消える.
 \displaystyle F=-\frac{\mathrm{d}\mathcal{E}}{\mathrm{d}d}=q_Aq_B/2
特にq_B=-q_A=qのとき,
\displaystyle f=-q^2/2

なのでこの考え方であってるはずだ.

2次元.一様電場中の線電荷

次に簡単な場合として,x方向に一様電場E={}^t[E,0] \sim[\mathrm{N^\frac{1}{2}/m}]がかかっている中に,xy平面に垂直に伸びる線状の電荷q \sim[\mathrm{N^\frac{1}{2}}]を置く.線電荷は座標 ^t[d,0]を通るとしよう.
力(単位長さあたり)は+x方向にqE \sim[\mathrm{N/m^2}]のはずだ.

Eのかかる領域が無限に広いと積分が収束しないし,電荷の座標dを動かしたところでトータルのエネルギー量が変わらなそうなので,0 < x < Xの範囲に限定しよう.幅Xの十分に広いコンデンサに挟まれているような状況を考えている.

コンデンサによる電場は

E(x)=\begin{cases}^t[E,0]&(0< x< X)\\ ^t[0,0]&(\text{otherwise})\end{cases}

電荷によって生じる電束密度
D(x,y)=\frac{q}{2\pi( (x-d)^2+y^2)}\begin{bmatrix}x-d\\y\end{bmatrix}

よって
E\cdot D=\frac{qE}{2\pi}\frac{x-d}{(x-d)^2+y^2},\quad (0< x< X)

まずy積分する.ただし0 < x < dd < x < Xで場合分けする必要がある.

  • d < x < Xの場合,
     \begin{align}&\frac{qE}{2\pi}\int_{-\infty}^\infty\frac{x-d}{(x-d)^2+y^2}\mathrm{d}y\\&=\frac{qE}{2\pi}\int_{-\frac{\pi}{2}}^\frac{\pi}{2}\frac{x-d}{(x-d)^2+(x-d)^2\tan^2\theta}\frac{(x-d)\mathrm{d}\theta}{\cos^2\theta}\quad (y:=(x-d)\tan\theta)\\&=\frac{qE}{2} \end{align}
    これをd < x < X積分して,\mathcal{E}_{(d,X)}=\frac{qE}{2}(X-d).
  • 0 < x < dつまりx-d < 0の場合,マイナスがつくので\mathcal{E}_{(0,d)}=-\frac{qE}{2}d.

したがって

\mathcal{E}=\mathcal{E}_{(d,X)}+\mathcal{E}_{(0,d)}= \frac{qE}{2}(X-2d)

\therefore f=-\frac{\mathrm{d}\mathcal{E}}{\mathrm{d}d}=qE.

2次元.平行な線電荷

z軸に平行な2本の直線状に電荷が並んでいる状況を考える.2次元^t[x,y]座標系を使うことにして,座標^t[-X,0]q_A \sim[\mathrm{N^\frac{1}{2}}],座標^t[X,0]q_Bがあるとする.
電束はそれぞれ

D_A=\frac{1}{2\pi( (x+X)^2+y^2)}\begin{bmatrix}x+X\\y\end{bmatrix}

D_B=\frac{1}{2\pi( (x-X)^2+y^2)}\begin{bmatrix}x-X\\y\end{bmatrix}

 \begin{align}\therefore D_A\cdot D_B
&=\frac{x^2-X^2+y^2}{4\pi^2( (x+X)^2+y^2)( (x-X)^2+y^2)}\\
&= \frac{r^2-X^2}{(r^2+X^2)^2-4X^2r^2\cos^2\theta},\quad (x=r\cos\theta, y=r\sin\theta)
\end{align}
これをr,\theta積分する訳だが,下手に変数変換してXを消そうとすると積分結果自体がXに依存しなくなってしまう.そのため積分領域を有限に区切る必要がある.R\gg Xとして0 < r < R,\ 0 < \theta < \pi/2積分する.
 \begin{align}\iint D_A\cdot D_B\mathrm{d}x\mathrm{d}y
&=4\int_0^\frac{\pi}{2}\mathrm{d}\theta\int_0^R \mathrm{d}r\frac{r(r^2-X^2)}{(r^2+X^2)^2-4X^2r^2\cos^2\theta}\\
&=4\int_0^\frac{\pi}{2}\mathrm{d}\theta\int_0^\frac{R}{X} \mathrm{d}r\frac{r(r^2-1)}{(r^2+1)^2-4r^2\cos^2\theta}
\end{align}
r=1,\ \theta=0で発散する訳だが,この点の近傍だけ積分領域から外すことにする.この積分はできそうにないが,X積分領域にのみ現れるから,X依存性だけを知るためには
\begin{align}\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}X}\left(\frac{R}{X}\right) \cdot \left[4\int_0^\frac{\pi}{2}\mathrm{d}\theta\frac{r(r^2-1)}{(r^2+1)^2-4r^2\cos^2\theta}\right]_{r=R/X}
\end{align}

(力尽きた)

3次元

座標系としては円筒座標を採り,任意の点の座標を[r\cos\theta, r\sin\theta, z]と書こう.\theta方向の変化はないから積分が1個簡単になる.q_Aが点[0,0,-Z]に,q_B[0,0,Z]にあるとする.
積分はこうなる:

\displaystyle\begin{align}\mathcal{E} &=2\pi \int_0^\infty r\mathrm{d}r \int_{-\infty}^{\infty}\mathrm{d}z\ D_A(r,\theta,z)\cdot D_B(r,\theta,z)\end{align}

次にD_A(r,\theta,z)を求めよう.任意の点[r\cos\theta,r\sin\theta,z]電荷の位置[0,0,-Z]の距離で決まるから

\displaystyle D_A(r,\theta,z)=\frac{q_A}{4\pi}\left\{r^2+(z+Z)^2\right\}^{-\frac{3}{2}}\begin{bmatrix}r\cos\theta \\ r\sin\theta \\ z+Z\end{bmatrix}

同様に考えれば
\displaystyle D_B(r,\theta,z)=\frac{q_B}{4\pi}\left\{r^2+(z-Z)^2\right\}^{-\frac{3}{2}}\begin{bmatrix}r\cos\theta \\ r\sin\theta \\ z-Z\end{bmatrix}

と表される.これらの内積をとって
\displaystyle rD_A\cdot D_B = \frac{q_Aq_B}{16\pi^2}\frac{r\{r^2+(z-Z)(z+Z)\}}{\left\{(r^2+(z+Z)^2)(r^2+(z-Z)^2)\right\}^\frac{3}{2}}

これをr,z積分するのか・・・?

追記

電磁気学演習 (物理テキストシリーズ 5)のp.56 例題15が参考になるか...?