電磁場に時間反転や空間反転を施したとき,その符号はどのように変わるかについて考察.
- 文献調査
- YouTube,ヨビノリ,基礎方程式の時間反転対称性,(2020),0:21:26
- J.J.サクライ,現代の量子力学(上) 第2版,(2015),p.388
- 北野正雄,電磁気学におけるパリティについて,(2010)
- 北野正雄,マクスウェル方程式―電磁気学のよりよい理解のために,(2009),pp.223-230
- 市口,電磁気学における混乱とCPT対称性の意義 -対称性に結びつく単位系-,(2009)
- 三田一郎,岩波講座 物理の世界 素粒子と時空〈2〉CP非保存と時間反転―失われた反世界,(2001)
- 砂川重信,理論電磁気学第3版,(1999),pp.36-44
- ランダウ,リフシッツ,場の古典論(原書第6版),(1978),p.55
- 考察
- まとめ
- 寝言
文献調査
砂川電磁気学(1999)の考え方が一般的のようだ.
YouTube,ヨビノリ,基礎方程式の時間反転対称性,(2020),0:21:26
www.youtube.com
空間反転については言及なし.ポテンシャルについてもなし.とはそれぞれ同一視していたが,下式では区別して書いている(以下同様).
時間反転で以下のように変わる:
北野正雄,電磁気学におけるパリティについて,(2010)
(調査中)パリティには,テンソルとしての階数と,擬性の2つの要因があるとのこと.さらに能動反転(系そのものを反転させる)と受動反転(座標軸のみを反転させる空間反転)の違い,ホッジ双対により2階テンソルをベクトルと考えたりすることも混乱の原因となっているらしい.
微分形式としての擬性とベクトル・スカラーとしての擬性をまとめてみる.ポテンシャルについては記述なし.
北野正雄,マクスウェル方程式―電磁気学のよりよい理解のために,(2009),pp.223-230
時間反転については記述なし.
- 能動反転(系そのものを反転させる)または成分
- 受動反転(座標軸のみを反転させる空間反転)かつ実体
市口,電磁気学における混乱とCPT対称性の意義 -対称性に結びつく単位系-,(2009)
https://core.ac.uk/download/pdf/236666076.pdf
- 空間反転
また,体積,誘電率,透磁率も空間反転でマイナスが付く擬量.
ただし,については出発点が異なれば異なる結果が得られることもあるとのこと.
- 時間反転
また,光速は時間反転でマイナスが付く.
- 荷電対称性
考察
やりたいこと
- 時間反転と空間反転を区別するのではなく,時空反転として統一的に記述したい.
- 各変数ごとにマイナスが付くのかつかないのか思い出すのが大変なので,覚えやすい法則にしたい.
仮定
記法
考察結果
電流密度
まず電流密度を3次元の2次微分形式で表す:
空間反転として3軸をいっぺんに反転させるのではなく,x軸だけ反転させることを考える.このときの成分はと変わるとする(仮定).またとなることも合わせると,
電荷密度,連続の式
連続の式(を成分で書いたもの)
連続の式を微分形式で書くと
磁場,アンペール則
アンペール則を成分で書いたもの
電場,磁束密度,ファラデー則,構成方程式
上述した「定数は時間反転,空間反転しても不変」という仮定のもとで,成分についてははと,はと同じ変換則
ただし微分形式では変換則がこれまで(1軸反転でマイナスが付く)と違う.
すなわちは1軸反転で符号が変わらない.
は反転するとマイナスが付き,には付かないので,構成方程式はある意味「ゆがんだ」変換となる.このゆがみを演算子で表すことにすると*7,自体が変換を受けて
ポテンシャル
ポテンシャルの式を成分で書いた
微分形式では
- スカラーポテンシャル
3次元では0形式なので空間反転は上記のまま,4次元では1次微分形式なので時間反転は - ベクトルポテンシャル
1次微分形式を反転させて,
となり符号が変わらない.
まとめ
微分形式表現
電磁気学の諸量を微分形式で表すと,x軸反転でも時間反転でも同じように変換され,下式で表すことができる:
当然だがy軸でもz軸でも同じで,要するに1軸反転したら上の式の右側の量にマイナスが付く.空間3軸反転でもがかかる訳だから同じ.
各量が右側にあるのか左側に来るのかだけ覚えておく必要があるが,この配置は北野のp.68の電磁界曼荼羅と整合しているのですぐ覚えられると思う.
で,成分の変換則を導出したいなら,各量が微分形式としてどのように表されるか(何次微分形式かとか,がどのようにくっついているかとか)を思い出して,反転したいところにマイナスをつければ,成分の変換則が分かる.
行列表現
成分の変換則を行列で表してみる.x軸方向の反転を表す行列として
ポテンシャル
上述の通り
についての反転は
寝言
ところで,熱力学の文脈で電磁場が存在する場合を考えるときに,を示強性の量,を示量性の量として捉えることがあるようなんだが,それと反転における符号の変化とは関連づかないだろうか? たとえば体積は電磁気学では擬形式なので空間3軸反転したらマイナスが付く.これに対して内部エネルギーの式
の体積も擬形式とみなすことはできないか?
*1:市口はここを符号変化すると言ってるが,その場合はどういう結果になるだろうか?
*2:全部4次元で書いた方がx軸反転も時間反転も統一的に書けて良いのだけど,どっちが分かりやすいのかなあ.以下,でも同様.
*3:この仮定が最初に挙げた文献たちと違う,この記事の差別化ポイント.相対論的に考えて,x軸反転もt軸反転も同じようなことをしてるので符号の変化の仕方も同じだ,と考えた方が覚えやすいのでこの仮定を置いた.
*4:時間反転のほうが冒頭に挙げた文献とは違う結果になっていることに注意.
*5:このことは未証明だが, とでも考えればいいのかな?
*6:との符号が合ってない気がするが結果には影響しないはずなので気にしない.
*7:はつまりホッジスター.テンソル的に言うと完全反対称テンソルが含まれていることがゆがみの理由となる.北野によればこれらが擬テンソルであるからということらしい.体積要素とか面積要素とか長さが負になる(座標系に対して逆向きになる)と理解したらいいのだろうか.
*8:CPT対称性って何?
*9:まあ4次元行列を使えばできなくもないんだけど.