wetchのブログ

他人に見られることを想定していない書き散らかし独習ノート.物理学とかVBAとか.

熱伝達率と温度境界層厚さ

熱屋さんには常識なのかもしれないけれど,つい最近間発見したことを.

参考文献

やりたいこと

熱を持つ平板とその周囲を流れる流体との間の熱交換量を表す式をまとめてみた.ただし境界層厚さの情報を含むものだけ.

記号

  • x:平板の先端からの距離
  • \delta:速度境界層厚さ、\delta_t:温度境界層厚さ
  • u:主流速度
  • \nu:動粘度、\lambda:熱伝導率、a=\lambda/(\rho c_p):温度拡散率
  • k:熱伝達率

無次元数は

まとめ

層流

温度一定の水平平板上の強制対流

相原p.59、望月らp.82

\begin{align} \frac{\delta}{x} &= 5 Re_x^{-1/2}, \\ \frac{\delta_t}{\delta} &= 0.976 Pr^{-1/3}, \\ Nu_x &= \frac{3}{2}\frac{x}{\delta_t}=0.332Pr^{1/3}Re_x^{1/2}\end{align}
最後の式から、\displaystyle Nu_{\delta_t}=\frac{3}{2}.

温度一定の鉛直平板上の自然対流

相原p.96、望月らp.113

\begin{align} \frac{\delta_t}{x} &= 3.93\left(1+\frac{0.952}{Pr}\right)^{1/4} / (Pr Gr_x)^{1/4}, \\ \frac{Nu_x}{(Pr Gr_x)^{1/4}} &= 0.509\left(\frac{Pr}{Pr+0.952}\right)^{1/4}, \\ \therefore Nu_{\delta_t} &= 0.509\times 3.93.\end{align}

温度一定の鉛直平板上の凝縮熱伝達

相原p.151、望月らp.165
ここでは\deltaは液膜の厚さ

\begin{align} \frac{\delta}{x} &= \sqrt{2}\left(\frac{H}{Pr Ga_x}\right)^{1/4}, \\ Nu_x &= \frac{1}{\sqrt{2}}\left(\frac{Pr Ga_x}{H}\right)^{1/4}, \\ \therefore Nu_\delta &= 1.\end{align}

ヌセルト数Nuというのは一般に流速や先端からの距離Re_xによって変化するような印象があるのだけど,以上のように境界層厚さ\deltaを基準に取れば定数になるものが多いことを発見した.Nu_\delta\equiv k\delta/\lambda=\mathrm{const.}ということは熱伝達率kが熱伝導率\lambdaと境界層厚さ\deltaだけで決まるということ.とは言え,境界層厚さ\deltaが流速とか先端からの距離Re_xで変化するのだから,結局NuReに依存するのだけど,対流熱伝達だからと言って特別な熱移動の形態がある訳じゃなくて,考え方としてこれは単なる熱伝導と見ていいということになる.

ただし以上はすべて層流の場合で,乱流の場合は違うみたい.

乱流

水平平板上の強制対流

相原p.74, 76、望月らp.133,139

\begin{align} \frac{\delta}{x} &= (0.370\sim 0.381) Re_x^{-1/5},\quad \because 1/7乗則 \\ St_x &= 0.0296 Pr^{-2/3} Re_x^{-1/5},\quad  (Nu_x = 0.0296 Pr^{1/3} Re^{4/5}) \\ \therefore Nu_\delta &= 0.0296\times 0.370^4 Pr^{1/3} \left(\frac{x}{\delta}\right)^3.\end{align}

この場合は右辺が定数にならない。