wetchのブログ

他人に見られることを想定していない書き散らかし独習ノート.物理学とかVBAとか.

2次方程式の次元解析

http://www.phys.cs.is.nagoya-u.ac.jp/~tanimura/class/H27-tanimura-quantum4.pdf

こちらの5ページに載ってる練習問題:
問9. 2次方程式 ax^2+bx+c= 0 の解は
 \displaystyle x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
で与えられるが,これらの関係式を次元解析の観点から分析・検討せよ.

について考えてみた。つまり解の公式を知らずに、2次方程式だけ与えられた時にどれだけのことが言えるかを考えてみる。

まずxの次元を\sf{X}、右辺の 0 の次元を\sf{Z}とする。すると係数の次元は

  • a : \sf{X}^{-2} \sf{Z}
  • b : \sf{X}^{-1} \sf{Z}
  • c : \sf{Z}

となる。

xa, b, cで表されるから、
 \displaystyle x=(\mathrm{const.})\times a^\alpha b^\beta c^\gamma\ \cdots(1)
と表されるはず。ただし(const.)は無次元定数、\alpha, \beta, \gamma \in \mathbb{Q}。これを次元で表すと
 \sf{X}=\sf{X}^{-2\alpha -\beta} \sf{Z}^{\alpha+\beta+\gamma}.
指数が両辺で一致するから、
 \begin{align}1&=-2\alpha-\beta & \cdots(2)\\ 0&=\alpha+\beta+\gamma & \cdots(3)\end{align}
となる。

変数が\alpha, \beta, \gammaの3つで式が2本だから自由度が1つ残るので、とりあえず\gammaを残す方向で解いてみる。(3)より、
 \beta=-\alpha-\gamma.\ \cdots(4)
これを(2)に代入して、
 1=-2\alpha-(-\alpha-\gamma) = -\alpha+\gamma,
 \therefore \alpha=\gamma-1.
この\alphaを(4)に代入して
 \beta=-(\gamma-1)-\gamma = 1-2\gamma.
ということで結局、(1)は
 \displaystyle\begin{align} x&=(\mathrm{const.})\times a^{\gamma-1} b^{1-2\gamma} c^\gamma \\ &=(\mathrm{const.})\times \frac{b}{a}\left(\frac{ac}{b^2}\right)^{\gamma} \end{align}
\gamma \in \mathbb{Q}は任意で、さらにその和でもよいから、極端に一般化すれば任意の関数fを使って
 \begin{align}x&=\sum_{\gamma}(\mathrm{const.})\times \frac{b}{a}\left(\frac{ac}{b^2}\right)^{\gamma} \\ &=\frac{b}{a}f\left(\frac{ac}{b^2}\right) \end{align}
または
 \displaystyle \frac{x}{b/a}=f(D), \quad D:=\frac{ac}{b^2}\ \cdots(5)
みたいなことでよい。
結局、次元解析による結論としては、

  • xは無次元量Dを使って式(5)のように書ける
  • Dによってxの挙動が変化するだろうと予測される(f(D)で定性的なところを表している)
  • b/aによってxの大体の大きさが決まる(b/a定量的なところを表している) ※解き方によってはb/aじゃなくってc/bだったり\sqrt{c/a}でもいい。

ということが言える。
また、元の2次方程式cで割って無次元化し、さらにxb/aで割ってx':=x/(b/a)と規格化すれば、無次元式
  x'^2+x'+D= 0
だけで考えればいいことも分かる。


実際、2次方程式の解の公式と比較すれば、
 \displaystyle f(D)=\frac{1}{2}(-1\pm\sqrt{1-4D})
だということが分かるし、判別式とか考えれば

  • D<1/4のとき異なる実数解
  • D=1/4のときに重解
  • D>1/4のときに異なる複素数

というふうに定性的な変化を起こし、2つの解の平均値-b/2ab/aで大体わかるという結論も正しいと分かる。

通常数学では判別式はD=b^2-4acと表すが、物理的に考えた場合D=ac/b^2等と書いた方が適切だということが分かった。



発展問題:これをもっと高次の方程式で考えると・・・?