wetchのブログ

他人に見られることを想定していない書き散らかし独習ノート.物理学とかVBAとか.

マクスウェル方程式,および電磁場の時間反転・空間反転のイラスト

wetch.hatenablog.com
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やりたいこと

以前やったときと同じ.

  • 時間反転と空間反転を区別するのではなく,時空反転として統一的に記述したい.
  • 各変数ごとにマイナスが付くのかつかないのか思い出すのが大変なので,覚えやすい法則にしたい.

今回は「覚えやすい」の部分をより改善するため,絵にできないか試してみる.

Source field

電流,磁場

xy平面上にループ状の電流jが微小時間\Delta tだけ流れたとする.その瞬間だけ磁場(z成分H_zだけ)が生じる.この様子を絵にするとこんな感じ.


縦方向の座標軸を時間にしていることと,磁場H_zの向きを上向きの矢印でなく電流と同じ向きに回転する矢印で表していることに注意.
この絵でx=0の面に鏡を置いて,x方向について系を反転する.以前やったやつの成分の変換則より符号が変わるのはj_x \overset{x}\mapsto -j_x, H_z \overset{x}\mapsto -H_zで,j_yはそのままだから,そうなるよう向きを書き込むと

のようになる.Hを回転矢印で表したことで,軸性ベクトルだから云々,なんてことを考えなくても,自然に系を鏡に映した状態になっていることが分かる.
y軸について反転させても同様(符号が変わるのはj_y \overset{y}\mapsto -j_y, H_z \overset{y}\mapsto -H_z):

時間軸方向に反転させると,電流jと磁場Hは時間反転で符号が変わらないから

となる.これもあたかもt=0面に鏡を置いて系を鏡映しにしただけと考えて違和感がない絵になっている.

電荷

ここでループ電流に電流が分断される箇所を入れる(コンデンサをイメージすればいい).これで同様に時刻t_1\Delta tだけ電流jを流すと,コンデンサの両極には\pm\rho=\pm j\Delta t電荷が生じ,電流がなくなっても電荷は残り続ける.これは時間軸方向に伸びる線で電荷が表されることを意味する.少し後の時刻t_2コンデンサを短絡させて電荷を消すとしよう.


時刻t_1,t_2の電流は,時間軸方向にずれているものの,合わせると閉ループになっている.この電流と自然につながるよう,電荷\pm\rhoを表す線に向きを付けよう.

すると上向きの線がプラスの,下向きのがマイナスの電荷を表すことになる.2本の電流の線および2本の電荷の線が合わさって時空内で閉ループになっている.
この絵をx, y, t軸方向にそれぞれ反転させる.電荷の符号が変わるのは時間反転のとき \rho \overset{t}\mapsto -\rhoだけだからそのように向きを書き込むと

となる.この絵でもそれぞの反転は自然な鏡映しで考えればいいことが分かる.

電束

電荷が存在するなら電束が生じるから,この絵にさらに電束を書き加えよう.この絵ではほぼD_xだけなのでそれだけ考えよう.D_xはプラスからマイナスの向きだが,この向きをHのような回転矢印で表して書き込む.


そして反転.D_xが符号変化するパターンはx軸反転とt軸反転のときD_x \overset{x\text{ or }t}\mapsto -D_xだから

となる.これでも成分の変換則と自然な鏡映しが整合している.いい感じだ.

Force field

磁場,ベクトルポテンシャル

絵を変えよう.x軸に沿った小さいコイルがあり,そこには過去からずっと電流が流れていて磁束Bが存在したとする.zx平面上の1本の磁束に注目すると,それはコイルを貫通する閉曲線になっている.そのBの内側にはベクトルポテンシャルAも存在する.Bがzx平面上にあることからAの成分はほぼA_yのみなのでそれだけ考えよう.状況を絵にするとこんな感じ.

縦方向の軸がtではなくzなのに注意.
この磁束Bをxy平面に平行な面で半分に切断してその断面だけを取り出し,縦方向の軸をzからtに変えて絵にする.断面では磁束はB_zだけが見えることになるが,それを回転矢印で表す.時間的にずっと存在していることも加えて絵にすると

となる.
この系をまずx軸で反転すると,符号変化するのはB_z \overset{x}\mapsto -B_zだけなのでそのように向きを書き込むと

となる.
同様にy, t軸で反転すると,符号変化するのはy軸反転のときのB_z \overset{y}\mapsto -B_z, A_y \overset{y}\mapsto -A_yだけなのでそのように向きを書き込むと

となる.やはりこの場合も自然に鏡映しにした状態と整合している.

電場

この系がある時刻でy方向に(一瞬で)移動し,また静止したとする.磁場が動いたので電場E_xができる.E_xの向きはこの絵だと外向き,広がるような向きだが,磁束と同じ向きの回転矢印で表す.


x, y, t軸反転で符号が変わるのはx軸反転とt軸反転 E_x \overset{x\text{ or }t}\mapsto -E_x なので絵にすると

となる.

スカラーポテンシャル

電場があるならスカラーポテンシャル\phiがあってもいい.Aと向きが合うよう矢印を書き込んでおく.反転で符号変化するのは\phi \overset{t}\mapsto -\phiであるので,いきなりx, y, t反転の図まで書くと


となる.

ちょっと待てよ...

ポテンシャルは4次元ベクトルでA^\mu=(-\phi,A_x,A_y,A_z)とか,4次元微分形式で-\phi\mathrm{d}t+A_i\mathrm{d}x^i}とか,[tex:\phiにはマイナスを付けてるんだよな.
ということは上の絵でも\phiだけ逆向きにするとか,そういうことを考えないといけないのではないのか?
まだちょっと整理できてない.

まとめ

電磁場の時間反転・空間反転による成分の変換則は,数式で考察しなくても,自然に絵をかけば直感的に理解できそうだ.擬ベクトルかどうかも関係ない.*1
ただし絵を描くルールとして,

  • 電荷\rhoスカラーポテンシャル\phiの正負は時間軸方向を向く真っすぐな矢印の向きに変換する
  • 磁場H,磁束密度Bの向きは空間軸方向だけを含む面内で回転する矢印で表す
  • 電場E電束密度Dの向きは時間軸方向を含めた面内で回転する矢印で表す

というのを考えなきゃいけないが.

参考

*1:実は関係ないこともない.\rho,j,H,Dの向きはホッジスターをとった状態で今回の絵では表しており,本来の擬ベクトル等の状態とはちょっと違う.