参考文献
はじめに
物を冷やす方法にはいろいろあるが、そのうちの一つに熱量効果というものがある.ちょっと検索したら力学熱量効果,弾性熱量効果,圧力熱量効果,磁気熱量効果,電気熱量効果,イオン熱量効果,マルチ熱量効果 と,たくさん出てきた.
冷えるという結果が同じである以上,原理的説明にも共通する部分があるはずだ.なので調べてみた.
一般論
設定
- 系の熱力学的な性質が温度, エントロピ, 一般の示量性変数, および共役の示強性変数の4変数で表されるとする.すなわち内部エネルギが次で表されるとする:
やりたいこと
変数についての偏微分が全部で24個できる訳だが,これらを全て求める.それによって,どうすれば温度が下がるのかを調べる.
公式
数学の公式として,として次が成り立つ:
∵
ヤコビアンの性質として,式(1.3)は普通の分数のように
別証明として,式(1.4)の両辺は
自由度についての考察
逆関数の微分公式(1.1)とマクスウェルの関係式(1.4)-(1.7)を使うと,24個の偏微分のうち16個は4グループに分類できる.
そしてこの4グループの変数は独立ではなく以下の関係を持つ:
∵
ヤコビアン公式(1.3)の det を展開して,式(1.4)-(1.7)を使って変形すると得られる.■残り8変数は,マクスウェルの規則(1.2)も使うと以下のように表すことができる.同様に逆関数の分は省略する.
- (1.4)と(1.5)から
- (1.5)と(1.6)から
- (1.6)と(1.7)から
- (1.7)と(1.4)から
よって結局これら24変数は3自由度で表せる.
具体的に系が与えられれば状態方程式は既知なので,以下は初めから既知ということになる:
比熱も既知になるから1個.
以上ですべての偏微分が決まる.
ちょっとだけ制約
定性的な性質を調べるため,符号についての制約条件を付ける.
- - 比熱は正.清水熱力学*3によると,一般には下に凸な関数だから.たまにそうでないこともあるみたいだけど(see 負の比熱(ふのひねつ)とは? 意味や使い方 - コトバンク).
- - 等温ならばが,または定ならばがそれぞれ正の相関.
このとき,各偏微分の符号は以下のように決まる:
- 等温過程
等温でやを大きくすると,つまり系は放熱する. - 断熱過程
断熱でやを大きくすると,つまり系は昇温する. - との関係
TS線図(縦軸に,横軸にを取ったグラフ)で考える.およびの線は両方とも正の傾きを持ち,の線の方がより大きな傾きになる.
また,の線の左上(Tが大きくなる側)で.同様にの線の左上がであることも分かる.
TS線図を実際に書くとこんな感じかな.