wetchのブログ

他人に見られることを想定していない書き散らかし独習ノート.物理学とかVBAとか.

逆関数のルジャンドル変換

教科書とかWikipediaで見かけないので自分で考えてみたものをメモ.
関数f(x)に対して逆関数f^{-1}(x)ルジャンドル変換をf^*(p), p=f'(x)と書くことにする.

定理

逆関数ルジャンドル変換は(f^{-1})^*(p) = -pf^*(1/p).

証明

まず記法を整理すると,y=f(x)ルジャンドル変換
 f^*(p)=xp-y,\ p=\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}
が分かっているときに,逆関数x=g(y):=f^{-1}(y)ルジャンドル変換
 g^*(q)=yq-x,\ q=\frac{\mathrm{d}x}{\mathrm{d}y}=1/p
を求めたいということ.これは
 g^*(q)=yq-x=-q(\frac{x}{q}-y)=-q(xp-y)=-qf^*(p)=-qf^*(1/q)
より成り立つ.

応用例

熱力学において,内部エネルギーU(S)ルジャンドル変換はヘルムホルツエネルギーF(T), T=\frac{\mathrm{d}U}{\mathrm{d}S}である.その逆関数であるエントロピーS(U)ルジャンドル変換したマシュー関数は\Psi=-F/Tあるいは
 \Psi(\beta)=-\beta F(1/\beta),\ \beta=\frac{\mathrm{d}S}{\mathrm{d}U}=1/T
と書ける.

具体例

例1 べき関数

f(x)=x^aとする。
 \displaystyle f^*(p)=(a-1)\left(\frac{p}{a}\right)^\frac{a}{a-1}
だから
 \displaystyle -pf^*(1/p)=-\left(1-\frac{1}{a}\right)(ap)^\frac{1}{1-a}
である。一方,逆関数f^{-1}(x)=x^{1/a}であり、
 \displaystyle (f^{-1})^*(p)=\left(\frac{1}{a}-1\right)(ap)^\frac{1}{1-a}
となり一致する。

例2 指数関数

f(x)=e^xとする。\displaystyle f^*(p)=p(\ln p-1)だから
 \displaystyle -pf^*\left(\frac{1}{p}\right)=\ln p+1
である。一方,逆関数f^{-1}(x)=\ln xであり、
 \displaystyle (f^{-1})^*(p)=\ln p+1
となり一致する。

例3:対数関数

f(x)=\ln{x}とする。\displaystyle f^*(p)=\ln{p}+1だから
 \displaystyle -pf^*\left(\frac{1}{p}\right)=p(\ln{p}-1)
である。一方,逆関数f^{-1}(x)=e^xであり、
 (f^{-1})^*(p)=p(\ln p-1)
となり一致する。

疑問点

微分形を考えてみる.
f微分すると\frac{\mathrm{d}f}{\mathrm{d}x}=p,そのルジャンドル変換は\frac{\mathrm{d}f^*}{\mathrm{d}p}=x
逆関数については\frac{\mathrm{d}g}{\mathrm{d}y}=q=\frac{1}{p},そのルジャンドル変換は\frac{\mathrm{d}g^*}{\mathrm{d}q}=\frac{\mathrm{d}g^*}{\mathrm{d}(1/p)}=x\Rightarrow\frac{\mathrm{d}g^*}{\mathrm{d}p}=-\frac{x}{p^2}

一方,-pf^*(1/p)p微分すると-f^*(1/p)+\frac{1}{p}\left.\frac{\mathrm{d}f^*}{\mathrm{d}p}\right|_{1/p}

微分が一致しない.おかしい.