wetchのブログ

他人に見られることを想定していない書き散らかし独習ノート.物理学とかVBAとか.

局所ゲージ変換って?

参考文献

高度な文献の話と分からない点

坂本の本をもとに書いてみる.

  1. 波動関数 \phi を考える.たとえばディラック方程式とかクラインゴルドン方程式とかに従うようなやつ.
  2. 大域的変換
    \psi'=e^{-i\theta}\psi
    で不変とする.ここで\thetaは定数.\psi微分ももちろん同じ変換則に従う:
    \partial_\mu\psi'=e^{-i\theta}\partial_\mu\psi.
  3. 局所的変換を考える:\Lambda(x)を時空の関数として,\psi
    \psi'=e^{-iq\Lambda(x)}\psi
    と変換するとする.このとき微分は,
    \begin{align}\partial_\mu\psi' &= \partial_\mu(e^{-iq\Lambda}\psi) \\ &= (\partial_\mu e^{-iq\Lambda})\psi + e^{-iq\Lambda}(\partial_\mu\psi) \\ &= -iq(\partial_\mu\Lambda)e^{-iq\Lambda}\psi + e^{-iq\Lambda}\partial_\mu\psi  \\ &= e^{-iq\Lambda}(\partial_\mu - iq\partial_\mu\Lambda) \psi\end{align}
    となり,\psiの変換則と異なってしまう.
  4. ゲージ場 A を導入して共変微分D_\mu=\partial_\mu+iqA_\mu とし,D_\mu\psi\psi と同じ変換をすることを要請する.つまり
    D'_\mu \psi'=e^{-iq\Lambda}D_\mu\psi.
    実際に計算すると,
    \begin{align}\mathrm{LHS}=D'_\mu\psi' &= (\partial_\mu+iqA'_\mu)(e^{-iq\Lambda}\psi) \\ &= e^{-iq\Lambda}\{\partial_\mu + iq(A'_\mu - \partial_\mu\Lambda) \} \psi ,\end{align}
    および
    \displaystyle \mathrm{RHS}=e^{-iq\Lambda}D_\mu\psi = e^{-iq\Lambda}(\partial_\mu+iqA_\mu)\psi.
    この2つが一致するから,A
    A'_\mu = A_\mu + \partial_\mu\Lambda
    と変換する必要がある(十分条件は?).これはまさに電磁ポテンシャルのゲージ変換であり,これが電磁力の起源であると見做せることになる.

力というのは,この例のように基準を人間が勝手に変更しても物理現象が変わらないようにするために現れる調整パラメータであるとみなすことができる.
こういうのを局所ゲージ変換をしても系が不変であるようにゲージ場が現れる,と言う.

・・・らしいのだが,波動関数の位相のイメージが分かっていないのでうまく理解できない.
初等力学で言うとどうなるのか?

重力場内の質点

  1. 質点mに下向きに重力gがかかっている状況を考える.座標軸として鉛直上向きにx軸をとり,質点\mathrm{p}x=x_\mathrm{p}の位置で静止しているとする.この系の位置エネルギー
    E_1=mgx_\mathrm{p}
    で一定.
  2. 上記では暗黙の了解として位置エネルギーの基準高さはx=0としていたが,少し一般化し,ある一定の高さhから測ることにする.位置エネルギー
    E_2=mg(x_\mathrm{p}-h)
    に変わるが,一定であることは変わらない.
  3. さらに一般化し,基準高さが時間の関数h(t)であるとする.すると今度は一見してエネルギー
    E_3(t)=mg(x_\mathrm{p}-h(t))
    が時間的に変化するように見える.微分で表すと
    \displaystyle \dot{E}_3=-mg\dot{h}(t)\neq 0.
  4. しかし基準高さの変更は私が勝手にしたことであり,物理現象はそれに影響されて変わってはならない.だから何とかしてE_3(t)を時間について一定にしないといけない.そのために力Fを加え
    E_4=mg(x_\mathrm{p}-h(t))+F\cdot(x_\mathrm{p}-h(t))=\mathrm{const.}
    とする.x_\mathrm{p}=\mathrm{const.}であることに注意して微分すると
    \dot{E}_4=(-mg-F)\dot{h}(t).
    これが 0 でなければならない訳だから,
    \displaystyle F=-mg
    の力がはたらかなければならない.

バネ系

  1. バネ定数kのバネの長さがxのときにもつエネルギーは
    \displaystyle E_1=\frac{1}{2}kx^2=\mathrm{const.}
  2. 上記ではバネの長さは0からxになったものと考えていたが,普通は自然長lから変化したものと考える.
    \displaystyle E_2=\frac{1}{2}k(x-l)^2
    x=\mathrm{const.}, l=\mathrm{const.}の下ではE_2=\mathrm{const.}
  3. この自然長lも人間が勝手に決めたもので適当に変えてよいので,時間の関数l(t)とする.
    \displaystyle E_3(t)=\frac{1}{2}k(x-l(t))^2.
    エネルギーは一定でなきゃならんからFを加えて調整する.*1
    \displaystyle E_4=\frac{1}{2}k(x-l(t))^2 + F\cdot(x-l(t)).
    時間微分
    \dot{E}_4=-k(x-l)\dot{l}-F\dot{l}.
    が 0 でなきゃならんから,
    F=-k(x-l(t))=k\ l(t)-kx.
    右辺第1項はバネを自由長まで伸ばすための力を表しており,第2項でフックの法則を再現している.

ポテンシャル内で静止している質点系

これまでの重力ポテンシャルやバネのポテンシャルの部分を一般化しV(x)と書く.

  1. 質点がポテンシャル V(x) 内で静止しているなら,エネルギーはそのまま
    E_1=V(x)=\mathrm{const.}
  2. 座標を測る基準位置をずらし, x \mapsto x+\epsilon に変える.ここではまだ \epsilon=\mathrm{const.}
    \displaystyle E_2=V(x+\epsilon)=\mathrm{const.}
  3. 基準位置を時間の関数に変える.
    \begin{align}E_3(t) &= V(x+\epsilon(t)),\\ \dot{E}_3(t) &= V'(x+\epsilon)\dot{\epsilon}.\end{align}
  4. これがconst.となる,すなわちエネルギーの時間微分が 0 となるように追加項を入れる.
    \displaystyle 0=\dot{E}_4 = V(x+\epsilon)\dot{\epsilon} + F\dot{\epsilon}.
    ここから
    F=-V'(x+\epsilon)=V'(x)
    の力を加える必要があることが分かる.

ポテンシャル内のエネルギー一定の質点系

運動エネルギーも加えてみる.

  1. 全エネルギーが一定であるとする:
    \displaystyle E_1=\frac{1}{2}m\dot{x}^2+V(x)=\mathrm{const.}
    ここでxは時間の関数だが,\dot{E}_1=0より
    \displaystyle m \ddot{x}+V'(x)=0
    が成り立つ.
  2. 座標の基準位置をずらす.
    \displaystyle E_2=\frac{1}{2}m {\dot{x}}^2+V(x+\epsilon).
    すると
    \displaystyle \dot{E}_2 =  \{m\ddot{x}+V'(x+\epsilon)\}\dot{x}
    で,多分これは 0 と言ってよいから E_2=\mathrm{const.} も言える.
  3. 基準位置を時間の関数に変える.
    \begin{align}E_3(t)&=\frac{1}{2}m\dot{x}^2+V(x+\epsilon(t)),\\ \dot{E}_3(t) &= \{m\ddot{x}+V'(x+\epsilon)\}\dot{x}+V'(x+\epsilon)\dot{\epsilon}.\end{align}
  4. 時間微分が 0 となるように追加項を入れる.
    \begin{align} 0 = \dot{E}_4 &= \dot{E}_3 + F\dot{\epsilon} \\ &= \{m\ddot{x} + V'(x+\epsilon)\}\dot{x} + V'(x+\epsilon)\dot{\epsilon} + F\dot{\epsilon} \\&= \{V'(x+\epsilon)+ F\}\dot{\epsilon}.\end{align}
    よって
    F=-V'(x+\epsilon)
    の力を加える必要がある.

結果ありきの不完全な論理になってしまった.要改善.

(未完成)解析力学

座標q,運動量pハミルトニアンH(q,p)で表される系について,たとえばqを定数分だけずらす座標変換q\mapsto \tilde{q}:=q+\epsilonは,母関数

W(q,\tilde{p})=(q+\epsilon)\tilde{p}
を使った正準変換で考えればいい.このとき
\mathrm{d}W=p\mathrm{d}q+\tilde{q}\mathrm{d}\tilde{p}+(\tilde{H}-H)\mathrm{d}t
より
\displaystyle p=\frac{\partial W}{\partial q}=\tilde{p},
\displaystyle \tilde{q}=\frac{\partial W}{\partial \tilde{p}}=q+\epsilon,
\displaystyle \tilde{H}=H+\frac{\partial W}{\partial t}=H.
特にハミルトニアンが変化しないことに注意.

ここでずらし量が時間の関数\epsilon(t)とすると

W(q,\tilde{p},t)=(q+\epsilon(t))\tilde{p}
より,ハミルトニアンはそのままでは
\displaystyle \tilde{H} = H+\frac{\partial W}{\partial t}=H+\dot{\epsilon}\tilde{p}
と変化してしまう.これを打ち消すためには追加項を
\tilde{H}=H+\dot{\epsilon}\tilde{p}+F\tilde{q} \quad (?)
というふうに入れる必要がある.右辺第2,3項がキャンセルされるためには
F = -\dot{\epsilon}\tilde{p}/\tilde{q} \quad (?)
という力Fがないといけないということになる.

熱力学

ちょっと論理の流れが違うけど一応.

高さzに対して重力的なポテンシャル\phi_\mathrm{ex}(z)がかかってる熱力学的な系が平衡状態にある*2.系を高さ方向に部分系\{z_1, z_2,\dots\}に細断して,各部分系ではポテンシャルは均一とする.部分系iの内部エネルギーをU_i,粒子数をN_iとする.
この系の状態を求めるには,原則としては保存量としての拘束条件

\begin{align}E&:=\sum_i[U_i+N_i\phi_\mathrm{ex}(z_i)]=\text{const.},\\N&:=\sum_iN_i=\text{const.}\end{align}
のもとでエントロピーS:=\sum_iS_i(U_i,N_i)を最大化すればよい.
よいのだが,ここで内部エネルギーにポテンシャルを繰り込んで:
U_i':=U_i+N_i\phi_\mathrm{ex}(z_i),
それでいろいろ書き変える:
\begin{align}E&:=\sum_iU_i'=\text{const.},\\S_i'(U'_i,N_i)&:=S_i(U_i,N_i)=S_i(U'_i-N_i\phi_\mathrm{e}(z_i),N_i).\end{align}
Sを最大化する際にU'_i, N_i偏微分することにすれば\phi_\mathrm{ex}がない系の平衡を考えることになるから
\begin{align}T'_1&=T'_2=\cdots,&{T'_i}^{-1}&:=\frac{\partial S'}{\partial U'_i},\\\mu'_1&=\mu'_2=\cdots,&-\frac{\mu'_i}{T'}&:=\frac{\partial S'}{\partial N_i}\end{align}
となる.ここで
\begin{align}{T'_i}^{-1}&:=\frac{\partial S'}{\partial U'_i}=\frac{\partial S}{\partial U_i}={T_i}^{-1},\\-\frac{\mu'_i}{T_i'}&:=\frac{\partial S'}{\partial N_i}=-\phi_\mathrm{ex}(z_i)\frac{\partial S}{\partial U_i}+\frac{\partial S}{\partial N_i}=-\frac{\mu_i}{T_i}-\frac{\phi_\mathrm{ex}(z_i)}{T_i}\end{align}
だから
\begin{align}T_1&=T_2=\cdots,\\\mu_1+\phi_\mathrm{ex}(z_1)&=\mu_2+\phi_\mathrm{ex}(z_2)=\cdots\end{align}
が得られる.
つまり物質を駆動する力である化学ポテンシャル\muにポテンシャル\phi_\mathrm{ex}分の力が加わることになる.

*1:メモ:l(t)は小さいとすると

\begin{align}\mathrm{d}E_3&\equiv E_3-E_1\\&=-kxl(t)+ F(?)\cdot(x-l(t) )\\&=kx(x-l(t) )-kx^2+ F(?)\cdot(x-l(t) )\\&=\mathrm{const.}\end{align}
xが一定の下でx-l偏微分して
0=kx +F,
\therefore F=-kx

*2:位置zに対して\phi_\mathrm{ex}(z)を電気的なポテンシャルと読み替えれば,この項は電気化学ポテンシャルを説明していることになる.