wetchのブログ

他人に見られることを想定していない書き散らかし独習ノート.物理学とかVBAとか.

マクスウェル方程式の表記法について

前回までの準備を踏まえて,マクスウェル方程式を考えていく.

やりたいこと

マクスウェル方程式の表記法としては

  • xEなどを3次元ベクトルとして表す,一番オーソドックスな方法
  • 3次元微分形式で表す方法
  • 4次元微分形式で表す方法
  • 4次元テンソルで表す方法

の4つがある.進んだ本だと4次元テンソルか4次元微分形式のどちらかで書かれているのが多いと思うのだけど,対応関係が何となくしか分かっていない.あと符号について,プラスかマイナスかが本によるのか表記法によるのか知らないが食い違っている気がする.なので整理していきたい.

記法に関して

  • 座標系として(t,x,y,z)または(x^0,x^1,x^2,x^3)とする.ミンコフスキー空間の向きもこの順.計量はあえて(\mp,\pm,\pm,\pm)とする.
  • 単位系は前回整理した単位系のうち2元系をもとに書く.ややこしいので\epsilon_0,\mu_0なんか書かない.
  • 3次元で書くとき,時間微分は上付きドット\dot{ }または\partial_t:=\partial/\partial tと書く.
  • 4次元で書くとき,フォントはカリグラフィ体を使う.*1
  • 微分形式で書くとき,左辺は下にカッコつきで数値を書いて何形式かを表す.たとえばk形式なら\underset{(k)}{A}
  • 本当は一覧表の感じにしたかったのだけど,画面の横幅が足りないので仕方ない.
3次元ベクトル記法 3次元微分形式 4次元テンソル記法 4次元微分形式
ポテンシャル \phi, \mathbf{A} \underset{(0)}{\phi}, \underset{(1)}{A} \mathcal{A}^\mu \underset{(1)}{\mathcal{A}}
  • 添え字\mu,\nu=0,1,2,3は4次元,i,j=1,2,3は3次元の添え字.

ポテンシャル

ゲージ変換
電磁場 force field
構成方程式 source filed
電流密度
マクスウェル方程式
連続の式
ローレンスゲージ
波動方程式(電磁場版)
波動方程式(ポテンシャル版)
エネルギ運動量テンソル
エネルギ保存則
ローレンツ
  • 3次元ベクトル記法:\mathbf{f}\equiv\dot{\mathbf p}=\rho\mathbf{E}+\mathbf{j}\times\mathbf{B}
  • 3次元微分形式:
  • 4次元テンソル記法:\dot{\mathcal{P}^\mu}=\mathcal{J}^\rho \mathcal{F}^\mu_\rho = \partial_\rho \mathcal{T}^{\rho\mu}
  • 4次元微分形式:\frac{\mathrm{d}\mathcal{P}}{\mathrm{d}\tau}=-*(*\mathcal{J}\wedge*\mathrm{d}\mathcal{A}),
    \mathcal{P}:=p_\mu\mathrm{d}x^\muは運動量1形式.
ラグランジアン

場の積の項は場のラグランジアン,ポテンシャルと電流の積の項は荷電粒子のラグランジアン


後半は表面的な理解のため埋め切れていないので追い追い追加していこう.

雑感:
3次元ベクトル記法から3次元微分形式への変換はほぼ単純な文字列操作で事足りる.

  • 空間微分∇をdにする.
  • 何形式かの判断は,
    • スカラーは0形式が3形式だが,∇がかかってたらそれは0形式(φ)
    • ベクトルは1形式か2形式だが,∇×がかかってたら1形式,∇・がかかってたら2形式
  • 合わなかったら*を使ってうまく調整.

3次元微分形式から4次元微分形式への変換は,時間と空間,2つの式をまとめていく作業になる.

  • (k-1)形式の式にある時間微分∂/∂tとk形式の式にある外微分dがペアになりk形式の外微分dになる
  • 上記ではしかし符号がどうなるかは統一的な考え方が見つからない
  • 計量の取り方で±が変化する箇所があるが,マクスウェル方程式以降の式には関係しない.

4次元テンソル記法は計算方法は具体的に分かるが,1形式か3形式かを区別していないように見えるのでちょっと情報が不完全。

混乱するのは,

  • 計量の符号の問題
  • 空間の向きの問題
  • ホッジ作用素が2回連続して作用した時にマイナスが付くのかつかないのか

というところで結局マイナスがどこにつくのか分からなくなるところ.微分形式やテンソルを使ったところでマクスウェル方程式は美しくならない.
あと,ホッジ作用素を通じて簡単に変換できる変数についてどう定義しているかも困る点.たとえば4次元では電流密度は3形式とも1形式ともとれるし,ローレンスゲージの式は0形式とするかn形式とするかも微妙だと思う.各種方程式でこれのつじつまを合わせるためにホッジ作用素をつけるか付けないかで少し悩む必要がある.マクスウェル方程式をポテンシャルで表記するとd*dA=jだけど,右辺が*jでないか,左辺が*d*dAとかd*d*Aではないことを確かめないといけない.ゆっくり考えれば分かると言えばそれまでだけど,間違った式は間違って見えるようにするというプログラミングの常識には反していると思う.

参考文献(2024/3/9追記)