動機
物理量って演算するときの制限が特殊なので,数学的にはどうなっているのか整理してみた.
基本的には当たり前のことしか書いていないし,いつものごとく結論は出ないので注意.
整理
物理量全体の空間をとすると,これは数値(実数)部分と次元部分の直積で表される.
つまりを次元部分を表す空間(次元空間と呼ぼう)として
.
数値部分を取り出す記号を,次元部分を取り出す記号をとすれば,物理量は
と書かれる.
は普通の実数なので,以降は次元部分について考えていこう.
積について
次元空間には積の演算が定義されており,可換群である.
つまり,に対して
- が存在する.
- 無次元と呼ばれる単位元が存在する..
- 逆元が存在する.
は有限群ではない.また,どんなでも,なら.*1
また,に対してとなるが存在する.これをと書く.つまり次元は有理数乗が可能.
このの積を用いて,の積が定義される:2つの物理量の積は
である.も可換群となる.
ベクトル空間化
積の性質より,次元空間に特別な次元 *2 を用意して,が
と書ければ.を基底としてというベクトルへの対応が可能となる.*3 *4
基底の中に無次元を追加して物理量空間からベクトルへの対応を考えてもいい気もするが,というちょっと不自然な空間になるためか?実際にはあまり用いられない.
和について
2つの物理量の和は,次元部分が等しいときのみ可能で,
と定義される.*5
この曲者の条件のために,物理量空間は環とかベクトル空間とか,既存の有名な空間にはならない.
感想
以上の構造を持つような数学的対象って何かあるのだろうか?
個別の次元についてユークリッド空間がくっついていて,それが無数にある・・・バンドル?とかいうのになるのだろうか.
追記
https://arxiv.org/pdf/1305.1291.pdf
もしかしてこれが正解なんじゃないか?と思ったけど,物理量全体のアンサンブルの性質にはさらっとしか触れてないみたいなんだよな...