wetchのブログ

他人に見られることを想定していない書き散らかし独習ノート.物理学とかVBAとか.

有限自由度系の共変解析力学

参考文献:http://physnakajima.html.xdomain.jp/CAM_rev.pdf

1質点運動(1自由度)

  • x(t):空間座標0形式
  • m:質量(スカラー
  • U=u(x)\mathrm{d}t:ポテンシャル1形式

とし,1粒子の1次元運動を時間座標tで表される1次元多様体上の微分形式で表す.

  • \mathrm{d}x=\dot{x}\mathrm{d}t:速度を表す1形式
  • {}^*\mathrm{d}x=\dot{x}:速度を表す0形式

となるので,ラグランジアン1形式は

L=\frac{1}{2}m\mathrm{d}x\wedge{}^*\mathrm{d}x-U=(\frac{1}{2}m\dot{x}^2-u)\mathrm{d}t.
運動量0形式は
p:=\frac{\partial L}{\partial\mathrm{d}x}=m{}^*\mathrm{d}x=m\dot{x}\mathrm{d}t.
ハミルトニアン1形式は
\begin{align}H&:=\mathrm{d}x\wedge p-L\\&=\frac{1}{2m}p\wedge {}^*p+U.\end{align}
以上より運動方程式
\mathrm{d}p\equiv m\mathrm{d}{}^*\mathrm{d}x=-\frac{\partial U}{\partial x}.

以上までが参考文献に載ってる話.

剛体(2以上の有限自由度)

この場合も微分形式は1次元多様体上のもので考える.しかし自由度がi=1,...,N個あるならば

  • x^i(t):空間座標0形式

となり,速度も\mathrm{d}x^i, {}^*\mathrm{d}x^iで表される.また質量は

と変化する.*1

このときラグランジアン1形式は

L=\frac{1}{2}m_{ij}\mathrm{d}x^i\wedge{}^*\mathrm{d}x^j-U.
運動量0形式
p_i:=\frac{\partial L}{\partial\mathrm{d}x^i}=m_{ij} {}^*\mathrm{d}x^j.
ハミルトニアン1形式
\begin{align}H&:=\mathrm{d}x^i\wedge p_j-L\\&=\frac{1}{2}(I^{-1})^{ij}p_i\wedge {}^*p_j+U.\end{align}
以上より運動方程式
\mathrm{d}p_i\equiv m_{ij}\mathrm{d}{}^*\mathrm{d}x^j=-\frac{\partial U}{\partial x^i}.

書いてみれば1自由度からの単純な拡張なのだけど,質量の扱い方で少し悩んだ.ただ不満点として,せっかく微分形式で書くことで(座標変換で容易に変化する)成分表記から解放されたのに,またテンソル表記が復活してしまったこと.無理やりベクトル表記にして,例えば運動エネルギー項を

\frac{1}{2}\begin{pmatrix}\mathrm{d}x^1,...,\mathrm{d}x^N\end{pmatrix}\begin{pmatrix}m_{11}&\cdots&m_{1N}\\\vdots&&\vdots\\m_{N1}&\cdots&m_{NN}\end{pmatrix}\wedge\begin{pmatrix}{}^*\mathrm{d}x^1\\\vdots\\{}^*\mathrm{d}x^N\end{pmatrix}
とでも書ければいいのだろうか.ウェッジ∧が微分形式の積と行列の積の両方の意味を併せ持つことになるのが面倒になるけど.

また,慣性モーメントm_{ij}は必ずホッジスター{}^*とともに現れているので,この2つをまとめてひとつの演算子を定義したほうがいいのかもしれない.

1個の荷電粒子

以上まででポテンシャルUと書いていたところに電磁場のクーロン・ローレンツ力を代入する.1粒子の3次元運動を考え以下i=1,2,3とする.

通常の書き方によるラグランジアン*2から類推して,ラグランジアン1形式は

L=\frac{1}{2}m\mathrm{d}x^i\wedge{}^*\mathrm{d}x_j+e(A-\phi\mathrm{d}t).
運動量0形式は
p_i=m{}^*\mathrm{d}x_i+eA_i.
ハミルトニアン1形式は
H=\frac{1}{2m}(p_i-eA_i)\wedge {}^*(p^j-eA^j)+e\phi\mathrm{d}t.

以上の書き方のメリットは,電磁場のマクスウェル方程式\mathrm{d}{}^*\mathrm{d}A=-jに出てくる1形式Aと同じAを使ってクーロン・ローレンツ力を表すことができること.

なのだが,問題がいろいろあって

  • 運動方程式が再現できない.
    m\mathrm{d}{}^*\mathrm{d}x_i=e(E+{}^*B\wedge\mathrm{d}x)
    のような形で書きたいのだが,たとえばB:=\mathrm{d}Aと定義すると2形式になってしまい,1次元多様体であるので存在しないことになってしまう.
  • なら(t,x,y,z)の4次元多様体上で考えればいいのか?と思ったが,それだとA=A_i\dot{x}^i\mathrm{d}tという変形が使えず,磁場と速度の積\dot{\mathbf{x}}\times\mathbf{B}の項が出てこなくなる.
  • A\dot{x}も成分にばらして計算すればそりゃできるけど,それだと初等的な教科書と何も変わらなくて,スマートな書き方にならない.

*1:単にN粒子系ならm_iとしか書けないが,剛体では非対角項が出てくるので2階テンソルとなる.対称であることは一般に仮定していいと思う.

*2:L=\frac{1}{2}m\dot{\mathbf{x}}^2+e(\mathbf{x}\cdot\mathbf{A}-\phi)